TRPGジャンクション

主にTRPGとか、その他のコンテンツとかについてグダグダと書き連ねるブログ

トーキョーN◎VA X『Long Cold Winter』シナリオ・トレーラー&ハンドアウト

■シナリオ・トレーラー


極寒の地、シベリア。
終わり無く続く吹雪と、果てしない氷河に閉ざされし都市。
支配するは古の亡姫と黄泉還りし古の為政者。
人々は魔物たちに飼われ、服従し、そして喰われゆく。
過去の栄華を再現するためのピースとして、虚栄を支える礎として。
しかし他に生きる術もなく、やがて来る確実な死を待ちながら、それでも人々は夢見る。
自由を!

トーキョーN◎VA The Detonation
『Long Cold Winter』

凍てつきし運命の輪が、旅人の訪れと共に回り出す。

 

■ペルソナ・ハンドアウト

 

●キャスト①:推奨スタイル:バサラorマヤカシ
 コネ:アナスタシア・ロマノヴァ

あなたは、聖母殿退魔局13課に所属する退魔師だ。
現在、ロシア連邦政府により遺棄されたゴエルロ・ペテルグラートへと向かっている。
そこは、復讐心から冥府魔道へ身を貶した亡国の美姫、アナスタシア・ロマノヴァが支配するアヤカシの楽園と化している。
あなたは誓った、真教の威光を示すために虐げられた民を開放することを。
そして何より、あなたの過去を精算するためにアナスタシアを滅することを。

『PS:アナスタシアを滅する』

 


●キャスト②:推奨スタイル:イヌorカブト
 コネ:超AIラスプーチン

あなたは、ゴエルロ・ペテルグラートを治める女王アナスタシアの側近の一人だ。
ゴエルロを管理、運営する超AIラスプーチン」の指示を受け、治安維持を行うあなたに与えられた任務は、アナスタシアに反旗を翻そうと画策する不穏分子の首領を逮捕すること。
しかし、そんなあなたをあ嗤うように囁く声がする。
「紛い物の走狗に身をやつし、罪なき民を狩りだすのがオマエの本分なのか?」と。

『PS:不穏分子の首領を捉える』

 


●キャスト③:推奨スタイル:カブトワリorカゲ
 コネ:ドミトリー・ベノワ

あなたはフリーランスの殺し屋だ。
裏社会では銘の知れたあなただが、今は屈辱に塗れペテルグラートの裏路地を逃げ回っている。
アナスタシア・ロマノヴァ暗殺の依頼を受け彼女の居城に赴いたあなたは、既の所で彼女の側近たちの妨害にあい、その場から逃走するしか手段がなかった。
この屈辱を晴らすためには、何としても彼女を仕留めるしかない。

『PS:アナスタシアを暗殺する』

 


●キャスト④:推奨スタイル:ニューロorタタラ
 コネ:アヤカシに堕ちた弟(名前はキャストに合わせます)

あなたは超AIラスプーチン」のエンジニア(ニューロならソフト面、タタラならハード面)だ。
あなたには弟がいた。
絶望に閉ざされたこの都市で、あなたにとって唯一の希望だった。
しかし、あなたの技術に目をつけたアヤカシたちは、あなたを従わせるために彼の命と引き換えにあなたに服従を迫った。
あなたに選択の余地はなかったが、弟が帰ってきたときあなたはアヤカシたちの邪悪さを知った。
あなたは今も服従させ続けられている。
今は人間ではなくなった、最愛の弟により。

『PS:アヤカシたちから逃れる』

 


■シナリオ・ルール

このシナリオでは、ペルソナ・ハンドアウトとキー・ハンドアウトを使用します。
キャストの受け持ちが決定した時点でキー・ハンドアウトを配布しますので、それを考慮してキャストを作成してください。
また、ペルソナ・ハンドアウト、キー・ハンドアウト共に、設定やシナリオでの立ち位置の改変は可能ですので、希望などがあればRLにご相談ください。

 
●使用サプリメント
使用するサプリメントは、基本的に『ジ・アザーサイド』のみとしますが、FS判定ルールとダブルハンドアウト・ルールを使用します。

 
●レギュレーション

達成値上限を21とします。どのようなコンボで21以上の達成値を出しても21止まりになります。
キャストの経験上限はありません。新規でキャストを作成する場合、当RLのセッションに限り使える経験値を50点配布します。
今回のみの特別ルールとして、報酬点1点を使うことにより、<社会:N◎VA>を<社会:ペテルグラート>として使用できます。

 
●必要神業

シナリオを進行させるうえで必要な神業はありません。
ドラマをより深くするために使用することを期待しています。


●RLより

ドラマとして盛り上がる場合は、PvPになる可能性もあります。
悲劇として永久凍土に閉ざされていくか、希望に満ちた春が訪れるかはあなた方次第。

 

 

【イベント】 トーキョーN◎VA 『Cafe & Bar “J◎KER" Triggered』

先週末に遊びに行って来た、N◎VAカフェのレポート。
書かないつもりだったのに、結局、書いてしまった。
今回のN◎VAカフェは、事前にキャスト登録した参加者にハンドアウトが配られるという趣向で、オレのキャスト、スプーキーに与えられたハンドアウトは、「ブルーベリーのシークレット・ライブをレポートしろ」ってもの。
ってなワケで、スプーキー視点のレポートです。
まぁ、普段はタフ&クールなスプーキーさんが、感情の制御チェックに失敗しまくった顛末記ということでw

 

 ■■■ side Tokyo N◎VA : “paparazzi” SPOOKY ■■■

オレがそのBarを訪れるのは、これで二度目だ。
『Cafe & Bar “J◎KER"』
一年に一度だけ開店するといわれる、幻の店。
ストリートではN◎VAカフェと呼ばてるらしい。
オレが前回訪れたのは単なる偶然だったが、今回はきっちりとした目的がある。
今日、この店で、あの“Blueberry”がシークレット・ライブをおこなうらしい。
そいつをエクスポーズするのが、今回のオレのbizってワケだ。


地下に至る階段の先にあるドアをくぐると、そこでは前回と同じく“占い爺”が受付をしていた。
クリッドクリスを提示しキャッシュを換金し、二言三言話して店内に入る。
無数の客で溢れかえる店内。オレはドアの横に陣取ってあたりを観察する。
あいも変わらずメジャーなゲストたちが給仕をする中、カウンターでシェイカーを振るターゲットを見つけた。
いつもと同じ胸の開いた紫のドレスが、長く青い髪と絶妙なコントラストを醸し出し、彼女の美しさを引き立てる。
いや、それだけではない。
今日の彼女はいつもより柔和で、それとは別に一種独特の緊張感を漂わせてる。
事前に、彼女は喉を壊しているらしいという情報を仕入れていたが、それが関係しているようだ。
しばら彼女を観察していると、オレの視線に気づいたのか、彼女の方から近寄ってきた。
おい、よせ。ヤメロ!
そんな優しい表情で話かけて、オレのbizを台無しにする気か?
オレはあくまでパパラッチだ。
アンタのヤバイ部分、弱い部分を暴き立てて金を頂く。
そんな汚い商売だ。
今日だって、アンタのライブが失敗したってエクスポーズしに来たんだ。
アンタに情が移ったら、そんな記事書けやしねぇ。
結局、オレは彼女の真っ直ぐな瞳に見据えられてビビっちまった。
写真の一枚も撮れず、際どい質問もできず、ただ視線を外してありきたりな受け答えをしてただけだった。
いや、別にあの美しい胸の谷間を眺めてたわけじゃないぜ?
ああ、確かに眺めていたが、アレはオレがファインダーに収めたなかで最も美しいものの一つだが、でもできるなら、あの強い光を放つ瞳の方を見つめたかった……

あ、まぁ、そんなオレの心情はどうでもいい。
その後、ライブまでの大半の時間を彼女を観察するのに使った。
店の中は、過去人やら死人やらが入り乱れて大騒ぎだったが、オレには彼女以外は関係なかったからな。
そりゃ、手慰みに何人かの情報収集を手伝ってやったりはした。
その過程で、彼女と話す機会がもう一度あったのだが、クール気取って煙に巻くのが精々だったな。
まったく、
「アンタが脱ぐなら何枚でも撮ってやる」
とか、
「どうせ脱がせるなら、スタジオよりベッドの上だな」
とかの、いつもならスラスラ出てくるハズの軽口が、今日に限っては一言も出やしねぇ。
ハイスクールのチェリーみたいに、ガチガチに固まっちまった。
オレが変だって?
いや、変なのは彼女だ。
たかがシークレット・ライブ。
なぜ、あそこまで気合が入っている?
近くで見た時の彼女は、メイクの上からでも青ざめてるわかった。
おそらく、立っているのもツライはずだ。
普通なら、中止にしても問題ないだろう。
たかだか50人規模の、小さなライブ。
彼女の経歴に傷なんか付くはずもない。
それでも、彼女はこのライブに賭けている。何かを。
オレはいつの間にか、その何かを見届けたくなっていた。
らしくないだろ?
そう、らしくない。
だが、そう思っちまったのは仕方ない。
オレは固唾をのんで、ライブが始まるのを待った。

案の定、彼女の喉の調子は壊滅的に悪かった。
高音域での伸びが悪く、声質にもいつもの艶がない。
それでも彼女は、懸命に歌っていた。
それに呼応するように、観客たちのボルテージも上がっていく。
誰も声なんて気にしていない。
いや違う。
みんな彼女の声を聴きに来ているんじゃない。
彼女の魂を聴きに来ているんだ。
だから、彼女の魂の輝きを全身浴びて、こんなにも幸福そうなのだろう。

次のステージでまた会おうと観客たちに告げ、彼女はバックステージに退場した。
おそらく、あの声の様子では次のステージはムリだろし、歌わせるべきではない。
彼女の歌は、こんなところで潰れるのは惜しいし、潰していいものでもない。
そんなことを考えながら書いたレポートは、とても読むに耐えないものだった。
主観的で感傷的な、過剰な持ち上げ記事。
これがキャッシュに変わるとは、到底思えなしい。
致し方なく、もう一度書きなおす。
bizモードで、パパラッチとして。
しかし、今度はそのレポートをエクスポーズする気が起きない。
そりゃそうだ。いつの間にかオレは、キャッシュよりも彼女のステージの方が大事に思えてきていたからだ。
考えあぐねた結果、両方を彼女のに見せて選ばせようという、とてもガキっぽい考えに至った。
彼女に選ばせたら、叩き記事なんて選ぶはずはない。
そうすりゃキャッシュはパーになるが……
その代わり、彼女の微笑みぐらいは撮らせてもらえるだろう。
今日はそれで良しとするさ。
なにに?
まぁ、メンツとプライドと……コレ以上はヤメとくか。

しかし、彼女は引っ込んだっきり現れず、ステージは中止になった。
ゴーストステップ(火星人だったか?)が、ブルーベリーが襲われてステージが中止になったとアナウンスしたが、冗談もほどほどにしろって。
こんだけの手だれが揃っていて、彼女一人守れないなんてことがあるハズはない。
アイツらは、自分たちの銘に傷をつけてでも、彼女を守ろうとしているのだ。
つまり、事態は深刻。
取り敢えずオレは店を抜け出し、近くのヤオヨロズへ。
何を買ったかって?
大したもんない。多分、気休め程度にもならない差し入れさ。

その後のことは、まぁ、どうでもいいし、あまり話したくもない。
結局、どっちのレポートを上げるかは自分で決める他なくなり、オレはトーキーのペルソナを外した。
差し入れを託した暴走警官には、含み笑いで誂われたが、それはヤツのカワイイ尻に免じて許しておいてやろう。
オレが退場する頃合いに、ブルーベリーはカウンターに戻ってきた。
声は過擦れてたが、強がれるほどには元気そうだった。
まったく、タフな女だ。
少し話したい気もしたが、今夜のオレはチェリーらしい。
ボロがでない内に早々と退散したさ。

最後に、“嗤う死神”という名のカクテルを奢ってくれた少年が、自分は死んでいるので、もうこの世には帰ってこれないと呟いていた。
そんなことはない。と答えてやった。
気休めかって?
いいや、そうじゃない。
だって、彼もブルーベリーの二度目のステージを観てないだろ?
つまりは、そういうことさ。

 

■■■ XYZ ■■■

 

あ、そうそう。
当日、店内にあったAV◎N(掲示板)に、
「シェイカーに振り回されてる風なレイに萌える人、挙手」
って書いてあるメモを貼ってみたんだけど、挙手した人が一人しかいなくて少しガッカリだったな。
せっかくなんで、みんなもっと悪乗りしてもいいんじゃない?
どのゲストがカワイイとか、カッコイイとか貼ったり、サインをねだってみたりとかも面白いと思うよ。
と、いうワケで、次回はもっともっと面白くなることを期待して……

XYZ

 

元記事:2013・05・28

【イベント】 トーキョーN◎VA 『Cafe & Bar “J◎KER" Reloaded』

9月16日に行なわれた、N◎VAカフェ第二弾 Cafe & Bar 『J◎KER』 Reloaded っていうイベントを覗いてきました。
時間がなかったんで、ほんの2時間ほど居ただけですけど、それでもなかなかに楽しいイベントでした。
で、レポートっぽいモノを書こうと思ったんですけど、せっかくライブRPG的なイベントだったので、レポートもリプレイ風にしようかとw
そんなワケで、若干イタイっぽい気もしますがリプレイ風レポートですw

 ■■■ side Tokyo N◎VA : “paparazzi” SPOOKY ■■■

そのBarの噂を耳にしたのはつい数時間前。イエローエリアの故買屋でのことだった。
ここ数年の取材で溜まりに溜まったジャンク・データの山を、行きつけの故買屋で一山数カッパーで換金し、僅かばかりのキャッシュを手に店を出たところだった。
ふと目に留まった一枚のビラ。
ソレは、年に一度だけオープンするというBarのチラシ。
日付と時間を確認する。
ビンゴ!
場所もそう遠くない。
コネとの合流までは、まだ後2時間ほど余裕がある。
オレは迷うことなく、そのBarに向かった。

メインストーリーから奥まった人気のない通り、ありふれた雑居ビルの地下一階にそのBarはあった。
地下に向かう階段、油断していると見落としてしまうだろう。
そこが目的の場所だと知らせているのは、一枚のブラックボードとそこに書かれた店名だけだった。
『Cafe & Bar “J◎KER” 』
それが、その店の名前だった。
階段を降り、ガラス扉を開ける。
さほど広いわけではない店内は2~30人の客で賑わっていた。
店内に入り、扉のすぐ左にあるレジでクレジットをキャッシュに換金する。
店の仕組みやルールを説明しながら換金をしてくれたのは、なんと、“青の魔道師”占いじじいと思われる老人だった。
老人はさらに、キャストととして登録するか、それとも登録せずにエキストラとして過ごすかと尋ねてきた。
なんでも、この店の影ではストリートの権力を巡る暗闘が行われており、その抗争に参加するのか?という事らしい。
オレの答えはNO!
残念だが、オレが羽根を伸ばせる時間は2時間ほどしかない。
この店でどのような抗争が行われているのかには興味があるが、中途半端に首を突っ込み、ケツに火を着けられるほどの余裕はない。
今夜は分相応に傍観者に徹する事にする。
とは言え、相手は“あの”占いじじいだ。どうせコチラの素性なんて鼻からお見通しだろうがな。

占いじじいに案内されて、シルバー一枚、カッパー三枚を手にしてカウンターに座る。
夜を過ごすには心許ないはした金だが、カクテルを一杯飲むには、これで充分。
「何になさいますか?」
オレが腰を下ろすのを見計らったように、カウンターの女性が声をかけてくる。
視線を上げると、金色の三つ編みをお団子状にまとめ、メガネをかけた童顔の女性がメニューを差し出してきた。
「!!!」
オレは思わず息を呑んだ。
その女性が着ている黄色いジャケットの胸には、悪名高い黄金のケルベロスのエンブレムが輝いていた!
『この女、あの悪名高い最凶コンビの片割れか!』
彼女の名はメモリ。“黄金の記憶”の二つ名を持つ、若き天才ハッカーにして特高警察ブラックハウンドのエースの片割れ。
何でこの女がバーテンの真似事をしてるんだ? しかも、ブラックハウンドの制服のままで!
笑顔の彼女から咄嗟に目を伏せ、メニューを受け取りながらIANUSとウェブのリンクを切断する。
この女が本気になれば、オレの脳の隅から隅まで引っかき回し、オレ自身が忘れているような記憶まで洗いざらい引っ張りだしちまうだろう。
そんなことをされたらコッチはメシの食い上げどころか、ヘタすりゃ命もヤバイ。
メニューに目を通すフリをしつつ、目の前で微笑んでいる女に気づかれないように辺りをうかがう。
驚いたことに、有名人(危険人物とも言う)はメモリだけではなかった。
店の前方にあるステージの前で、最凶コンビのもう片方、“暴走警官”レイ”がカードで客の一人とやり合っている。
テーブルの間をせかせかと動き回り、客から注文を取っているのはドゥームド・モスクの次代聖母と目される “小聖母”ミュー。
カウンターの中でメモリと並んでシェイカーを振っている白いスーツの男は、北米最大の犯罪結社、カーライル・シンジケートの幹部、“嗤う死神”キース・シュナイダー。
バックヤードから何やら荷物を運び出している、河渡連合の“千の傷跡”黒岩三郎。
客にスキヤキ(かなり美味そう!)を運ぶ、千早重工後方処理課課長、早川美沙。
河渡連合を女で一つで仕切る音羽組長の専属カブトと、千早重工実戦部隊のトップが何をやってるんだ?
そして極めつけは、バックヤードで皿洗いに興じる千早グループの若き社長、“死の右腕”千早雅之。
こんな狭い店に、これだけの顔が集うなんてただ事じゃない。
メモリにロゴス(メニューの一番上の列にあった)を注文し、滅多に使わないメモ帳を取り出しペンを走らせる。
CDなやり方だが、目の前にニューロが居るときはコレに限る。
「何を書いてるんですか?」
メモリがロゴスを置きながら聞いてくる。
「いろいろ。視たこと、聴いたこと、考えたこと」
「トーキーの方ですか?」
「まぁ、そんなもん」
せっかく目の前の美女が話しかけてくれているのに、コッチはそれどころじゃなかった。
店の広さから、テーブルの配置。客構成、男女比、年齢比。
著名人たちの動きから、客が興じているカードのルールまで。記録することは山のようにある。
客達の話しに耳を傾けていると、カードの勝敗によりクリスタルを得、その数によって情報を入手したり所属組織の力を蓄えたりしているらしい。
誰が考えたか知らないが、なかなかスマートなやり方だ。
もっとも、荒事でケリを着けるって話しになった瞬間、この店は血の海どころか、さながら地獄の様相を呈するだろう。
なにせ、一騎当千の猛者がゴロゴロ居やがるからな。

ある程度の情報をまとめたところで、ふと気がつくとメモリが居なくなっていた。
代りにカウンターに入ったのはレイ。
不機嫌そうな表情と慣れない手つきで、懸命にカクテルと戦っている。
意外と小柄な彼女は、シェイカーを振るときも全身を使うようにブンブン振り回す。
視ようによってはシェイカーに振り回されているように見えるところが実に微笑ましい。
それとは対照的に、手慣れた手つきで次々と注文をこなしていくキース・シュナイダーは、殺し屋よりもコチラの方が本分では無いかと疑うほどにクールだった。
客に対する対応もスマートで、微笑みを絶やすことなく丁寧に接客している。

メモリが姿を消して十数分ほど経った頃、一人の女性がバックヤードから現れた。
黒のドレスをまといステージに向かう美女。彼女の名はブルーベリー、N◎VAで最も人気のある歌姫の一人だ。
こんなところで、彼女の生ライブを聴けるとは!
歌はハザード前のヒット曲のカヴァーが四曲。
オレが知っているのは一曲しか無かったが、それでも充分満足だった。

ブルーベリーのステージが終わった頃には、オレの空き時間はほとんど終わっていた。
コネを待たせないですぐにでも席を立つべきだったのだが、その頃にはこのBarの雰囲気が心地よく、去りがたい未練のようなものを感じていた。
カウンターにはブルーベリーと入れ替わりで戻ってきたメモリが、レイと漫才のような掛け合いをしながら注文をこなしている。
シェイカーのトップをカクテル・グラスに被せてみたり、ストロベリーシロップを入れすぎてみたりと、なかなかハラハラさせられる光景だったが。
そうこうしている内にラストオーダーの時間が近づいてきて、店内が慌ただしくなり出した。
そろそろ帰る頃合いのようだ。
メモリに一声かけて席を立つ。
そこで、少しイタズラ心が頭をもたげた。
「メモの中身、知りたい?」
「知りたいです」即答。
メモ帳から1ページ破いて彼女に渡す。走り書きのアドレスとtwitterのアカウント。
別に下心があるわけじゃない。
けど、これっきりってのもツマラナイとは思った。
縁があれば、またどこかで。

店を出て地上に登ったちょうどその時、激しい雨が降り出した。
一瞬だけ店に戻ろうかとも思ったが、コネを待たせてる手前そうもいかず。
店内では外していたサングラスをかけ、それと同時にペルソナも変える。
エキストラの時間は終わったのだ。
雨はやむ気配もなく、それでも時間は過ぎていく。
しょうがないと溜息一つ吐いて、雨の中を歩き出した。


■■■ XYZ ■■■

 

 

まぁ、その数分後にカバン忘れたことに気づいて、店に戻るワケだがなw
メモリさんに見つからないようにコソコソ回収しようとしたけど、ムリだったよw
さすが、にゅーろ!!!w

 

※元記事:2012.09.18

トーキョーN◎VA 「孤独な狗、墜ちた星」 

以前に主催していたサークルの会誌用に書いた小説と、そのルール的解説のコラム。
元になったTRPGは「トーキョーN◎VA the Detonation 」
地軸移動による氷河期の到来により、環境が激変した近未来。
東京湾に建造された人口島トーキョーN◎VAを舞台に、ノワールな物語が繰り広げられます。
サイバーパンクの影響下で創られたゲームなので、人体改造は基本として、超能力者や拳法の達人。
企業のCEOやチンピラや娼婦まで、様々なキャラクターを創造できるのが魅力のTRPGです。

ちなみに主人公は、超ハッカーにして銃の達人の刑事(ニューロ/カブトワリ/イヌ)
ヒロイン、軌道コロニーの特権階級から墜ちこぼれて娼婦になってしまった幸運の女神(ハイランダー/マネキン/カブキ)
ライバル、拳法の達人にして超能力者のマフィア(チャクラ/バサラ/レッガー)

〆切り(構想から書き上げまで4日)と文字数の都合で出来はあまり良くないのですが、まぁ、暇つぶしにでもどうぞw

 

トーキョーN◎VAショートストーリー

「孤独な狗、墜ちた星」

 その女は、誰も使うこと無く放置された埃塗れのソファーと剥き出しの壁の間の狭いスペースに、捕食者に追われる小動物のように縮こまっていた。
「ノーマ・ジーン?」
 感情を欠片も含ませない冷たい声が、女に投げかけられる。
 女は一瞬身をすくませ、それから恐る恐る声の主を見上げた。
 長身で引き締まった体型の男。
 金髪だが根本は黒い。 おそらく染めているのだろう。
 顔に埋め込まれたミラーシェードと両腕のサイバーアームが無機質な光を反射している。
 黒を基調としたジャンプ・スーツに、同じく黒のレザージャケットを羽織っている。
 胸にはバッチ。 黄金のケルベロスを象ったエンブレムが鈍く輝いている。
「ブラックハウンド?」
 ノーマ・ジーンと呼ばれた女は、おびえを含んだ声で男に問う。
 非人間的な強引な捜査と実力行使による事件解決で、企業人、犯罪結社、一般市民にまで分け隔て無く怖れられる特高警察ブラックハウンド。黄金のバッチは、彼がのそのメンバーであることを示していた。
「百眼だ、 アンタを探しに来た。立てるか?」
 ノーマが答える間すら与えず、百眼は彼女の腕を取り強引に立たせ、その姿を一瞥する。
 緩くカーヴのかかった金髪、ブラウンの瞳、流麗な曲線を描く輪郭。 彼女の顔立ちは、百眼の保持する画像データと寸分違わず合致した。
「酷い格好だな。レッドゾーンに逃げ込んで5時間、よく生き延びていたものだ」
 ノーマは百眼の言葉に自分を姿を見下ろした。 合成では無い天然のシルクで織られた白いカクテルドレスはレッドゾーンを逃げ回ったことによる無惨に汚れ、原形を留めないほどに至る所が裂けていた。
 彼女は一瞬恥ずかしげに胸元を隠し、そのあと、思い切ったように百眼に縋り付いた。
「なぜ、もっと早く助けに来てくれなかったの!?」
 まるで恋人に語りかけるように甘く拗ねた声。
 百眼はそんなノーマをミラーシェードで見下ろし、淡々と事実だけを述べた。
「2ヶ月前キミが誘拐されたあと、何者かがキミのデータを巧妙に隠した。それでどの企業警察も公安組織も、キミが行方不明になっていることにすら気づかなかった」
「それじゃ、アナタだけが私を見つけてくれたの?」
「オレは人捜しが得意なだけだ。アンタが生きてようが死んでいようが、そのうち見つけていたよ」
 ノーマは不満そうな声を上げたが百眼は意にも介さずに続けた。
「アンタを房総空港で軌道シャトルに放り込むのが仕事だ。それ以外に興味は無い。いいか、邪魔になるな」
 パンッ!
 ノーマの平手が百眼の頬を鳴らした。
 瞳に涙を溜め、ノーマが百眼を睨む。
「レッガーにされわれて無理やり身体売らされて、死ぬ思い出逃げ出したのよ!死ぬより怖かったんだから。それなのにそんな冷たい言い方って!」
 ノーマが自らの怒りを表現しようともう一度手を振り上げた。しかし、その手が振り下ろされる前に百眼は彼女を抱きすくめ、そのまま床へと押し倒した。それと同時に射撃音が空気を振わせ、無数の銃弾が廃墟の中を踊り回る。
「さすがに猟犬の旦那は鼻が利く。その獲物を渡してくれりゃ、ちゃんとご褒美あげるぜ?」
 銃撃のあとに響いた揶揄する声は、ノーマが潜んでいた廃マンションの外から聞えた。
「アイツ、私をさらったヤツ」
 ノーマが低く声をあげた。その声は苦痛と恐怖に引き攣っていた。
 百眼のノーマをかばいつつ、ストリートの各所に配置された監視カメラをドミネートした。通常の風景の上にデジタル上のストリーム・マップが被さる。
 フリップ・フロップ。
 リアルとウェブを同時に知覚する、ニューロのみが可能とするスーパー・テクニック。
 ミラーシェードに次々とウィンドウが開き、さまざまなアングルからレッガーたちの様子を写しだす。レッガーたちの数は6人。内5人がサブマシンがで武装し、残り一人がアサルトライフル
 ブラックハウンドの犯罪者データベースで検索をかける。答えは3秒。中国系マフィア三合会のチンピラどもと、最近香港HEVENから渡ってきた用心棒、帳雷飛。アサルトライフルの男がそうだ。
「おいおいワン公。返事はどうした?黙り決め込んでるなら蜂の巣にしちまうぞ!」
 帳雷飛が喚き、空に向けて銃弾をばら撒く。どうやら威嚇のつもりらしい。
 ノーマはその音に怯えて、百眼の腕の中だ身を竦ませる。
「片付けるてくる。動くな」
 百眼はそう告げ、ノーマが言葉を発する間もなく駆け出し窓から飛び降りた。

 タイプD、起動。
 サイバーウェアにより神経の反応速度が加速される。視界が色を失い灰一色に塗りつぶされ、風景がゆっくりと流れる。
 突然、頭上から飛び出してきた百眼に度肝を抜かれたチンピラたちは慌てて銃を向けようとするが、一人の銃が持ち主の意に反して仲間たちにむかって発砲される。
 レッガーのIANUSを乗っ取った百眼による攻撃だが、チンピラたちに知るよしもない。撃たれたレッガーが別の相手を撃ち返し、同士討ちによって次々と倒れていく。百眼が地面に降り立ったときには、立っているのは帳雷飛だけだった。
「てっ、テメェ! 何しやがった!」
 帳はアサルトライフルを向けるが、それよりも早く百眼は動いた。サイバーアームの前腕部から内臓式マシンピストルがポップアップし銃弾を吐き出す。一瞬にして数十発の弾丸を受けた帳は、呻き声さえ漏らす間もなく崩れ落ちた。
「粋がってないで奇襲すべきだったな」
 そう吐き捨てて百眼は背中を向けた。

「百眼!」
 廃マンションからノーマが飛び出してくる。倒れているレッガーたちを器用に飛び避け、全力で百眼に抱きついた。
「アナタ、凄いのね!私のためにこんな……」
 抱きついた勢いのままノーマの顔が百眼に近づいてくる。潤んだ瞳がゆっくりと閉じていき、彼女の体臭が甘く鼻腔をくすぐる。
 半ば本能的に、百眼は彼女を突き放す。
 ヒュンッ!
 空を切り裂く音と共に、百眼の右肩に衝撃が走った。銃弾がめり込む感覚。そして、そこを中心に強力な電圧が全身を駆けめぐる。
「グゥッ!」
 過剰負荷の電圧にサイバーアームが煙を噴き上げ機能停止し、強化された神経系統を麻痺させる。百眼は膝から崩れ落ちるが、ノーマがすんでの所で抱きとめた。
「おいおい、見せつけてくれるじゃネェかよ」
 帳雷飛がゆっくりと立ち上がる。口元にはサメのような笑みを浮かべ、余裕げに左手でスーツの埃を払う。
「旦那、言うまでも無いとは思うがコッチもビジネスだ。その女は一晩でプラチナムを稼ぐ。黙って帰すってワケにはいかねぇんでな」
 張が右手を前に伸ばし百眼に向ける。
 百眼は地面に倒れ伏しているチンピラのIANUSを再度ドミネートし、SMGの引き金を絞らせる。構えること無く引き金を絞られた銃身は、その反動で踊回り、マガジンに残った全弾をデタラメにバラ撒いた。無数の銃弾が周囲の壁を、アスファルトを穿つ。しかし銃弾そこには留まらず、その全てが跳弾し、視認も予測もできない軌道で帳に襲いかかる。
 避けることもかわすこともできず、全身で銃弾を受けようと見えた刹那、何の前触れもなく帳の周りにプラズマの嵐が吹き荒れた。無数の稲妻が閃き、全ての銃弾を捕らえ蒸発させた。
「バサラか!?」
 百眼が驚愕の声をあげた。
 超能力者、霊能力者。噂には何度も聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてだった。
 張はサメの笑みを貼り付けたまま、何事も無かったように右手に握り込んでいた物を弾いた。
 ビシッ!
 咄嗟にノーマを突き飛ばした百眼の左肩が爆ぜる。
「ガアァァッ!」
 再度、全身を襲った電撃に百眼を叫び声を上げて倒れ伏した。
「まったく、ウェット相手にこんなもんブチ込むたぁ、さすがブラックハウンドはやることがエゲツねぇ」
そう軽口を叩き、右手を小指から順に開いていく。その中に握り込まれた弾丸が地面にこぼれ落ちる。百眼が最初に帳にむかって放った銃弾は、全てその手でつかみ取られていた。
「とは言えコッチも面子の商売だ。やられた分は返させてもらうぜ」
 そう言って帳は三発目の指を弾く。電撃をまとった銃弾は脇腹に着弾し、凄まじい衝撃により百眼の身体は痙攣をおこす。しかし、その口からはもう呻き声すら出ない。
「もうやめて!」
 ノーマが張にすがりつく。
「一緒に行くから。もう逃げないから。これ以上、酷いことしないで!」
 張は煩わしそうにノーマを振りほどき、地面に投げ出された彼女に向け指を鳴らす。その瞬間、空に閃いた落雷がノーマを直撃し、彼女は悲鳴を上げ崩れ落ちる。
「一緒に行くだぁ? 眠たいこと言ってるんじゃねぇよ。オマエに端から選択権なんかねぇ、死ぬまで客を取り続けるんだよ!」
 張はそう吐き捨て、ノーマの腹を思い切り蹴った。二度三度、銀の蛇革が彼女の腹にめり込む。張の顔には愉悦の表情が浮かび、それと対比するようにノーマの顔は苦悶に歪んでいった。そうやって数分間ノーマをいたぶっていたが、不意に興味を失ったように踵を返し、「オイ、いい加減帰るぞ」と促した。
「お願い、最後にお別れ言わせて」
 しばらく咳き込んでいたノーマが、嗚咽をあげながら息も絶え絶えに哀願した。張は軽く溜息をつくと首をしゃくって促した。ノーマは這いずるように百眼に近づき、その髪を優しく撫で、頭を愛おしげに抱きしめた。
「ゴメンね、私が逃げたせいでこんなことになって。軌道から捨てられてから、私を捜してくれたのはアナタだけだったの。嬉しかった。だから、ありがとう。・・・・・・さようなら」
 百眼の顔に涙が降り注ぐ。しかし、百眼はピクリとも動かない。ノーマはぎゅっと瞼を閉じると、意を決して立ち上がりよろめきながらも歩き出した。足を引きずりながらも、帳の後ろを自分の足で歩いていった。

 


 強烈なのスポットが瞳を焼き、大音量の音楽が耳をつんざく。無数の男女の欲望の熱気が、とぐろを巻くように場内に渦巻いている。嬌声、罵声、羨望、嫉妬、好奇の目。それらさまざまな物がノーマを待ち受けていた。
 彼女の前には、ホールを縦断する一直線のステージ。そこで値踏みされ、競られ、今夜の客が決まる。客席に着くのは、いずれも名の通った企業のエグゼグたち。彼らの表にはできない欲望を晴らすために巨万の金が動く場所、それが娼館「銀影月」。
 ノーマは無表情でステージの上を歩いていく。彼女がステージに姿を現した瞬間、待ちかねたと言うような歓声が上がる。地上での特権を欲しいままにするエグゼグたちですら、本物のハイランダーに目通りできる機会は少ない。それが此処では、金さえ払えれば一夜とはいえ自分の物にする事ができるのだ。自分たちが地上を支配してるというプライドと、どんなに望んでも軌道までは手が届かないというコンプレックスを満たす為に、彼はどんなに金を積んでも惜しくなかった。
 客たちの期待を一身に受けながら、ノーマはステージの端まで歩ききる。そこで彼女は軽く溜息をつき、身にまとったカクテルドレスの肩をずらす。ドレスは身体を滑り落ち、彼女の裸身が満場に晒される。その美しさに息を呑む気配と共に彼女の価格を決めるための競りが始り、ホールは再び活気を取戻す。
 裸を晒し欲望の熱気に炙られても、ノーマの感情は動くことはなく無表情は崩れることは無かった。
 ホールを一瞥する。ここにいるのは金と欲望の亡者だけだ。
『彼らに媚びることは無い。彼らが自由にできるのはこの身体だけ、だから魂は高みから彼らを見下ろしていよう』
 ノーマはそう思うことにした。彼女を救いに来る者はもういないのだ。ならばせめて、自分の運命に対して毅然と立ち向かおう。自分に命をかけてくれた、たった一人の彼のために。

 競りは熱気を帯び、ノーマの価格はうなぎ登り上がっていく。が、やがて、その上がりかたは緩やかになり、最後にダメ押しの提示をした若いエグゼグが今夜の客に決まった。彼は立ち上がり喜びを露わにし、周りの羨望と失笑を買っている。
 ノーマが客の元へ行くためにステージを降りようとしたその時、用心棒の一人が入場口よりホールに飛び込んできた。V.I.P席のある奥へむかおうとしたところで、後ろから入ってきた男に射殺される。
 ノーマは見た。長身のその男は黒いジャケットを羽織り、その胸には金のバッヂが鈍い光を放っていた。感情が呼び戻される。驚き、喜び、安堵。
 ありったけの力で彼の名を呼んだ。
「百眼!」
 その叫びに客たちが振り返る。その眼に映るのは、特高警察ブラックハウンド。
 百眼はサイバーアームからマシンピストルをポップアップさせ、音響ブースにむかって連射する。
 ブースのガラスが砕け散り、アンプを通じて増幅された銃声がホール中に響き渡り、客たちを恐怖のどん底へ蹴落す。
「フリーズ!ブラックハウンドだ!軌道特権略取、および不法侵害の容疑での手入れだ!テメェらの顔は全員記録した。起訴されたくなかったらとっと消え失せろ!」
 その声と共に、客たちは雪崩を打って逃げ出した。我先へと出口へむかう。混乱のただ中、ノーマは百眼の元へむかうために人の波に向けて飛び込もうとした。その時ーーー。
 彼女の頭上でスパークが走り、スポットライトの一つが目の前へ落下した。
 後ろから強引に腕を引っぱられ、ノーマはバランスを崩して転倒した。
「まぁた逃げようってのか、このクソ女」
 張が握っている手に力を込める。電撃がノーマの身体を駆けめぐり、彼女から抵抗する力を奪い取る。張はノーマを抱え上げてステージの奥へ走る。
「ノーマ!」
 百眼の叫びに反応し、ノーマが薄く眼を開く。彼の無事な姿に安堵の微笑みを浮かべる。しかし、“雷帝”の能力により力を奪われた彼女は抵抗することも叶わず、張によって連れ去らわれる。
「クッ」
 人混みに逆らい2人を追うのが困難と判断した百眼は、人の流れに逆らわずそのまま出口へむかう。その間、交通管制にアクセスし、手近なホバーリムジンをドミネート、自分が出口をくぐるタイミングで横付けさせ、そのまま乗り込む。
 出力を最大にして上昇する。ホバーの噴射を直接浴びて吹き飛ばされる人間がいたが、気にもしない。そのまま一気に60階の屋上まで飛ぶ。

 ビルの屋上にはヘリポート。プライベート・ヘリがローターを回転させ離陸の準備をしている。開け放たれたドアから乗り込む三合会の幹部、香主・劉万凱と張雷飛。そして、彼に捕われたノーマも無理やりヘリへ押し込まれる。
 百眼は更にホバーリムジンを上昇させ、屋上の全景をIANUSに記録する。同時にヘリの性能、構造、材質、拾えるだけの情報をデータベースから引き出しておく。その間、3秒。
 全ての情報が揃いホバーリムジンを降下させようとしたとき、リムジンに気づいた帳がヘリから飛び降り電撃を発した。電撃を受けリムジンのボンネットが吹き飛び、コントロールを失い墜落する。
 リムジンを操縦する百眼に気づいたノーマが悲鳴をあげるが、すかさずリムジンを捨て屋上へ飛び降りた百眼を確認し、安堵の表情を見せる。
「しつこいイヌだ。尻尾を巻いてりゃ死ななくて済んだのになぁ」
 張の両手からスパークが迸る。強力な電磁波が発生、百眼のIANUSとウェブとの接続が断線しサイバーアイによって投射される視覚もノイズに侵される。
「機械の手助け無しで歩けるか、サイボーグ?」
「ウェブとの接続を切ったぐらい喜ぶな、機械音痴。手はいくらでもある」
 百眼はすかさず屋上のデータをアップロードし視覚を補正し、張との戦闘データから、彼の移動、攻撃のパターンをシミュレートする。
「なら、試してやるよ!」
 張がサメの笑みを浮かべて数発の指弾を打ち出す。しかし、その時すでに百眼は回避行動を始めていた。バサラの能力により電磁誘導され、通常の銃弾を遙かに超えるスピードで飛来する指弾を、百眼は全て回避して見せた。
 百眼が反撃のため銃を構えた瞬間、猛烈な風に襲われ体勢崩す。
 ヘリのローターの回転が一段と速くなり上昇を始める。屋上に突風が吹き荒れる。
 張がその風に乗るように跳躍し一気に百眼との距離を詰める。指弾では殺れないと判断し、接近戦を挑むつもりだ。
 張は百眼の目前に着地し、勢いを殺すことなく身体を旋回させ足刀を蹴り込む。
 百眼はその蹴りをかわすことができず吹き飛ばされて屋上の縁まで吹き飛ばされるが、自ら転がって勢いを殺し、マシンピストルを張に発砲する。
「ムダだって憶えろよ。バカイヌが」
 無数の電撃が張を中心に踊狂い、次々と銃弾を迎撃しはじき飛ばす。
「残念、本命はオマエじゃない」
 百眼は無表情に言い放ち、再度、発砲した。
 チンッ!
 甲高い音が響く。
 銃弾が銃弾を弾く音。
 百眼の放った銃弾は張が電撃で弾き返した銃弾に命中し跳弾となった。そして2発に跳弾はさらに別の跳弾を生み、無数の跳弾が張の電撃の結界を飛び越えヘリを襲う。
「ノーマ、伏せろぉ!」
 窓に張り付き、不安げに闘いの行方を見守っていたノーマにその声は届いた。
 叫ぶ百眼と眼があった瞬間、ノーマは百眼の想いを感じ取り咄嗟に身を伏せた。
 無数の弾丸がヘリを貫通し、その内部を跳ね回る。劉万凱は何が起こったか理解する間もなく、無数の銃弾をその身体で受け止め絶命した。

「ふざけやがって、よくもクライアントを!」
 張の声が怒りに震えていた。
「そうだ、金の出所が無くなってもまだやるか?」
「ああ、そうだな。ここから先、命を張るのはバカらしい。でもな、メンツは立てさてもらうぜ」
 そう呟いて張は不敵な笑みを浮かべる。
 パチッ!
 指を鳴らす。稲妻がヘリを直撃した。
 ヘリのエンジンが煙を上げ、きりもみしながら落下していく。
「オレの仕事を潰してくれたお礼だ。これでお互い痛み分けだな」
 百眼はヘリにむかって走る。その背後に張が言葉を続けた。
「今日はこれで手打ちにしておいてやるよ。だが、やり合う時は命もらうぜ」
 しかし、百眼には聞いている余裕は無かった。屋上から墜落していくヘリにむけて飛び降りる。左のサイバーアームに仕込んだアンカーをヘリに打込み、ローターの回転に巻き込まれないように注意しながらヘリの中へ侵入する。ヘリの中では、空へ放り出されないように座席にしがみついたノーマが、一人、不安と恐怖に耐えていた。
「ノーマ!大丈夫か?」
「私は何とも……でも、このまま落っこちるわ」
「できる限りはやる」
 百眼はノーマを抱き寄せて操縦席へ移動する。落雷でショック死したパイロットを横へ押しのけ、操縦系統を確保するためにヘリへのドミネートを試みる。しかし、数回にわたって強力な電圧に晒されたサイバーウェアは正常に作動しない。
「チクショウ、あの電気野郎め!」
 百眼が声を荒げ、コントロールパネルを殴りつける。
 心配そうな素振りで、ノーマがそっと百眼の腕を取る。
「ムリなの?」
 百眼は苦々しく首を縦に振り、彼女の言葉を肯定する。
「そう、じゃあ仕方がないわね」
 吹っ切ったように笑う。そうして百眼を後ろからそっと抱きしめた。
「最後にお願いしていい?下に着くまでキスして欲しいわ」
 その言葉に百眼は怪訝な表情を浮かべたが、ノーマの瞳に諦観と覚悟と、自分への深い親愛の情を感じ取って、自らも覚悟を決めた。
「キミを軌道に帰せなかったな。済まない」
「アナタと一緒にいるのに、帰りたいなんて思わないわ」
 2人は見つめ合い、唇を重ねた。
 その時、百眼を奇異な感覚が襲った。
 瞼の裏が光の奔流に満たされ、意識が上昇する感覚。
 視界が開けると、暗黒の空間と目の前に巨大な青い惑星。
 自分の視線が、その青い惑星の一点を凝視する。赤道、日本、旧東京湾トーキョーN◎VA、中華街、娼館「銀影月」、落下中のヘリ、百眼。
 視線は拡大していき、自分のIANUSを通じて改造された神経系を駆けめぐる。
 至るところが寸断され、オーバロードした強化神経を発見する度に超極小のマシンが修復していく。全ての破損箇所が修復され終わったとき、百眼とノーマは唇を離した。
「百眼、宇宙が見えたわ」
「ああ、オレにも見えた」
 頬を上気させ半ば放心状態のノーマを抱きかかえたまま、百眼は再度、ドミネートを試みた。
 自分の五感とヘリのメカニックが接続する。カメラは眼に、ローターは腕に、方向舵は足に、エンジンは心臓に。エンジンを限界までまわし、落下を少しでも遅らせる。そうして稼いだ時間で機体の水平を取戻した時には、地上はもうすぐそこまで迫っていた。あと数分もしないうちに墜落するだろう。
 ノーマを墜落の衝撃がら守るために強く抱きしめる。
 彼女は百眼を見つめて、透き通るような微笑みを浮かべた。
「大丈夫、私たちはきっと、大丈夫」
 ノーマが抱き返しながら耳元でそう囁いた。
 彼女の体温に安堵を感じながら、百眼はその言葉を心から、本当に心から信じることができた。

 

XYZ

 

トーキョーN◎VAコラム

“キャラクター・メイク"

 トーキョーN◎VAのキャラを創る上で一番重要なのは、いかに“カッコイイ"キャラクターを創るかってこと。これは鉄砲バンバン!や電気バチバチ!ってなガジェット的なカッコ良さだけではなく、何を考え、どんな選択をするのか?っていうのが気になるキャラ。つまり生き様が魅力的なキャラを創ろうってこと。
 N◎VAのキャラは26種類のスタイルから3種類を選び、外面のペルソナ(◎)、本質のキー(●)、隠された性質シャドウ(記号なし)に組み合わせることで、ほぼ無限のキャラ表現を行うことができる。
 このスタイルは、職業、クラス的なものだけじゃなく、キャラの生き様や運命といったものまで表現できるので、キャラクターメイクの段階でキャラの設定を盛り込むことが可能なのだ。
 その類い希な表現力を持ったシステムを、ただのデータ的有利不利だけで終わらせるのは勿体ない。ちゃんとキャラの内面や背景も掘り下げてやれば、もっともっと深くて面白いセッションを楽しめるのだ。
 というわけで、今回のキャラたちの解説をしてみよう。ドラマとガジェットのバランスを考えて創ったので、参考にしてみて欲しい。

“百眼” ◎イヌ/ カブトワリ/ ●ニューロ
 特高警察ブラックハウンドの隊員にして電脳ガンスリンガー
 ウェブを通じて世界を認識しているうえハッキングで電脳機器を乗っ取るのも得意なんで、どこからでも射撃できるし、どこへでも当てる。
 ペルソナは法の執行者イヌ。キーは成功や勝利を導く者ニューロ。最後にシャドウはカブトワリで、破滅や破壊をもたらす者。
 動き出したら周囲に甚大な被害を与えながら事件を解決するっていう迷惑な人なんだけど、それによって新しい人生や世界を切り開く人。他人にも、自分にも。

“ノーマ・ジーン” ◎マネキン/ カブキ/ ●ハイランダー
 薄幸のヒロインなんで、マフィアに掠われて強制的に娼婦をやらされている。まぁ、サイバーパンクではありがちかも。
 軌道の特権階級の“お姫さま”。とある事情で地上に捨てられた可哀想な人。生まれの秘密とか悲惨な境遇のため、愛に飢えてます。
 ペルソナはマネキンで魅力的で愛に依存する者。キーのハイランダーは希望。シャドウはカブキで無分別で夢想的。
 感情的でフラフラしているトラブルメーカー。基本的にお荷物で迷惑な人なんだけど、彼女を手に入れれば希望の星が!って感じの割とそのまんまなキャラ。
 実は、こういう一見無力なキャラクターこそが物語には重要で、N◎VAではちゃんとセッションに参加できるのが面白い。

“帳雷飛” ◎●レッガー/ バサラ/ チャクラ
 中国マフィアの用心棒で、超能力拳法使い。
 ウェット(生身)なのでハッカーによる干渉を一切受け付けず、“雷帝”(雷使い)なので電子機器をショートさせることも可能。社会の至る所まで電脳化が浸透したトーキョーN◎VAでは、かなり手強い相手。百眼も直接対決は避けてます。多分、勝てない。
 レッガーは悪や暴力を表すスタイルなので、ペルソナ、キーともにレッガーなこの人は、心底最低のクズ野郎。そしてシャドウのバサラは知恵や知識を、チャクラは節制や求道心を表すので、悪い事にはひたむきで真摯、どんな努力も惜しまないという最悪のキャラクター。

 

“神業"

 トーキョーN◎VAの華、神業。
 毎回ドラマチックな展開や悲喜劇を呼び起こすこのルール。今回のストーリーではどこで発動し、どういう結果をもたらしたのかを軽く解説。実プレイの参考になるといいね。

『百眼に射殺されたはずの張が生きていた』
 チャクラの神業“黄泉還り(フェニックス)”の効果で、完全死亡からでも復活する。チャクラらしく銃弾を全てつかみ取るという演出。

『張が百眼にとどめを刺さない』
 マネキンの神業“プリーズ!”の「他人に神業を使ってもらう」という効果で、張の“黄泉還り”を百眼に使わせた。演出的には、ノーマが娼館に戻る代償に百眼は見逃してもらった事になる。

『娼館「銀影月」から逃げ出すエグゼグたち』
 イヌの神業“制裁(パニッシュ)”の効果でエグセグたちをシーンから退場させた。

『百眼がホバーリムジンでビルの屋上へ飛ぶ』
 ニューロの神業“電脳神(デウス・エクス・マキナ)”でリムジンを探す、乗っ取る、屋上まで飛ぶを神業を使い一行動で行った。

『電撃で吹き飛ぶリムジン』
 バサラの神業“天変地異(カタストロフ)”は建物やヴィークル1台を破壊する。リムジンが破壊されたら、百眼は屋上にたどり着けない。。

『屋上に無事着地する百眼』
 カブキの神業“チャイ”の神業一つを打ち消す効果で、“天変地異”を打ち消した。そのためリムジンは壊れたが、百眼は屋上へたどり着けた。ノーマ、ホッと胸を撫で下ろす。

『絶命する劉万凱』
 カブトワリの神業“どどめの一撃(クーデグラ)”は、射撃を必ず命中させ、キャラクター一人を完全死亡させる。邪魔する張の電磁結界を飛び越えて当てました。

『百眼、宇宙が見えたわ』
 ハイランダーの神業“天罰(ネメシス)”はハイランダーの傍若無人とも言える特権を行使する。ノーマのキスにより、彼女の自己修復用ナノマシンが百眼の神経破損を癒やしたという演出。

 

ヴァンパイア:ザ・マスカレード 「散る薔薇、咲く薔薇」

ヴァンパイア:ザ・マスカレード 「散る薔薇、咲く薔薇」
トレーラー&ハンドアウト

■■■ シナリオ・トレーラー ■■■

白銀に覆われる観光都市、シルバリング・シティ。
そこに連日連夜、若者たちで賑わうサロンがあった。
サロン・イデアーレ。
一人の老人が、たった一本の薔薇のためにしつらえた特別な温室。
薔薇は温室の中で数多の人々に愛でられ、優雅に咲き誇っていた。
だが、温室に出入りするのは、薔薇を愛でようとする者たちだけではない。
美しさはまた、悪意をも惹きつけてしまうものだから。

ヴァンパイア:ザ・マスカレード

「散る薔薇、咲く薔薇」

気高さこそが、薔薇を美しく咲き誇らせる。

 


▼▼▼ PC①ハンドアウト ▼▼▼

氏族:トレアドール

貴女の『血の親』は、トレアドールの長老「アレッサンドロ・クストーレ」である。
彼は、シルバリング・シティの中心街に“イデアーレ”という名のサロンを経営していた。その店は連日連夜、若いヴァンパイア達と、その将来の餌となる人間達で溢れている。
貴女は歌姫としてサロンで歌い、男達の賞賛と女達の羨望を一身に受け、満ち足りた生活を謳歌している。
しかし、貴女はふと不安になる瞬間がある。
貴女の満ち足りた生活は『血の親』の権力の賜であり、もし彼が失墜したとき、貴女を守るものは何も無いのだ。

そして、その不安が現実となる時が来た・・・


【背景】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の背景を持っている。

「資産」●●●  貴方は$50,000の資産と、月$3,000の収入がある。
「地位」●    貴女はトレアドールの幼童として、カマリリャ内で公に認められている。
「名声」●    貴女は、シンガーとしてシルバリング・シティでは知られた存在だ。

【訓え】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の訓えを持っている。

<威厳>●  複数の人間を貴方の影響下におく。<魅力>+<演技>、難易度7。
<先覚>●● <知覚>+<共感>、難易度7で、オーラの色を見分けられる。

 

 

▼▼▼ PC②ハンドアウト ▼▼▼

氏族:アサマイト
貴方は、アサマイト(暗殺者)氏族のヴァンパイアである。
まだヴァンパイアとしての年齢は若いが、ある目的のために全米を旅している。
その目的とは、貴方の『血の親』から<粛殺>の≪訓え≫を奪い、永遠の滅びを与えたヴァンパイアを探し出し報復することだ。
手がかりは唯一つ、『血の親』の寝所に残されたハングドマンのタロットだけ。
あとは、全ての街を虱潰しに探していくしかなのだ。
幸いにして、貴方には永遠の命がある。いつかは仇に巡り会えるだろう。

そして、貴方は新しい街に踏み込む。
果たして、この街で仇の手掛かりを得ることができるだろうか?

【背景】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の背景を持っている。

「資産」●●   貴方は$8,000の預金と、月$1,200の収入がある。
「地位」●   貴方はアサマイトの幼童として、カマリリャ内で公に認められている。
「導師」●●  貴方には強い力を持った導師がいる。


【訓え】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の訓えを持っている。

<粛殺>●●  相手の体力を直減らす毒を作る。
       <血>を一点以上消費して<意思力>判定。難易度6。
<隠惑>●   物陰に隠れるとき、光に晒されず、相手が<先覚>を持っていない限り
       は見つからない。

 

 
▼▼▼ PC③ハンドアウト ▼▼▼

氏族:ケイティフ

貴方にとって、カマリリャは居心地の良い場所ではない。
血の親を持たない貴方には何の権利も与えられず、ただ蔑みの視線を投げられるだけの場所だ。
しかし、サロン“イデアーレ”だけは別だ。
サロンのオーナー「アレッサンドロ・クストーレ」は貴方のような下賤な者でも差別無く受け入れ、同じ氏族の様に扱ってくれた。
もし可能ならば、彼が困ったときには何か手助けしたい。と貴方は考えている。

そんな事が起こるわけが無い、と思いながら・・・


【背景】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の背景を持っている。

「 餌 」●●●  貴方に忠実な人間が15人いる。彼らは血の提供にも快く応じてくれる。
「コネ」●    貴方は、ノスフェラトゥのコネが居る。
「資産」●    貴方は$1,000の資産と、月$500の収入がある。


【訓え】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の訓えを持っている。

<剛力>●  <筋力>に関する判定に、一個の自動成功。
<頑健>●  ダメージ減少判定にダイスを一つ足す。
<獣心>●  動物と会話できる。命令する場合は<交渉>+<動物理解>難易度6~8。

 

 

▼▼▼ PC④ハンドアウト ▼▼▼

氏族:ヴェントルー

貴方は、シルバリングシティ・カマリャのヴェントルー氏族の中では、新参者の幼童である。
氏族の誰もが貴方の将来を期待すると口にしつつも、貴方が将来のライバルに成長しないように裏で足を引っぱっている。
彼らの既得権益に割り込むのは割が合わないと判断した貴方は、将来の権益を得るために、若いヴァンパイア達を自分の味方にする事を考えた。
若輩たちは、彼ら幼童を取るに足らない者と蔑んでいるが、時と経験によって幼童たちが力を付け、いずれは若輩たちを脅かす存在になることを貴方知っているのだ。
貴方は、若いヴァンパイアたちがたむろする、サロン“イデアーレ”に足繁く通い、自らの人脈作りに邁進している。彼らこそが、未来の貴方とカマリリャの力となるのだ。

【背景】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の背景を持っている。

「 餌 」●    貴方に忠実な人間が3人いる。彼らは血の提供にも快く応じてくれる。
「地位」●    貴方はヴェントルーの幼童として、カマリリャ内で公に認められている。
「資産」●●●  貴方は$50,000の資産と、月$3,000の収入がある。


【訓え】 貴方は、キャラクターメイクの時に、以下の訓えを持っている。

<威厳>●  複数の人間を貴方の影響下におく。<魅力>+<演技>、難易度7。
<頑健>●  ダメージ減少判定にダイスを一つ足す。
<支配>●  対象に一言の命令を実行させる。対象の意思力を難易度に<交渉>+<脅迫>で判定。

 

 

自作シナリオ目録:クトゥルフ編

来年からの活動再開に向けて、自作シナリオの整理中。 
ってか、凝りすぎてわかりにくい所を修正したりとかのリメイク中ってところ。 
そんなわけで、取り敢えずどれを優先してやっていくかも含めての目録作りから。 

■クトゥルフ神話RPG 自作シナリオ目録 

▼1920年~アメリカ 

①「魂の器」 
ワシントン州クイーンズで起こる事件。 
売れっ子のショウダンサー、ホリィ・デイジー。 
恋人のギャング、ジャン=ジャック・バローの後押しもあり、富と名声を我が物としている。 
しかし、彼女の周りでは不審な殺人事件が頻発していた。 
一方、PC達は一人の老婆と知り合う。 
その老婆は泣きじゃくりながら、自分が本物のホリィ・デイジーで、何者かに肉体を奪われたのだと訴える。 

②「豚の胃の中」 
ミネソタ州ダルースで起こる事件。 
長距離バスで移動中のPC達は、事故により立ち往生するはめになる。 
助けを呼ぶこともできず途方にくれていると、麦畑から一人の少年が現れ、困ってるいるなら自分の住む孤児院に一晩泊まっていくといいと提案する。 
PC達は少年に案内してもらい孤児院に向かうが、その孤児院には大人は存在せず、年端の行かない少年少女がたった七人で、養豚場の豚を世話して生活していた。 

③「彼ら、海より来る」※未発表 
ルイジアナ州マナウィダンで起こる事件。 
「霧の夜には外出してはいけない。外出すれば彼らに連れ拐われる」 
という掟のある港町。 
ある、朝から霧が立ち込める日。海岸に年代物の漂着物が無数に打ち上げられ、それとともに謎のメッセージが砂の上に描かれていく。 
霧の中に先祖の姿を見たという者があらわれ、ネイティブアメリカンの血を引く者達が惨殺されていく。 

④「リーズ家13番目の少女」※未発表 
ニュージャージー州アトランティックシティーで起こる事件。 
街は怪物に脅かされていた。 
馬に翼を生やしたようような姿の怪物は、街の近郊で家畜を襲い、電車を止め、やがて人間をも襲うのは時間の問題だと思われていた。 
そんな中、PC達は一人の少女と出会う。 
その少女は、200年前に怪物を生み出したリーズ家の最後の一人で、怪物は自分を連れ戻すために現れたのだと告白する。 

▼現代~日本、ヨーロッパ 

①「豊穣の森に還る」 
八重山諸島上降島で起こる事件。 
卒業論文の取材と、フィールドワーク中に行方不明となった先輩の捜索のため、上降島を訪れたPC達。 
上降島では一年に一度の秘祭が行われており、その間、島外との行き来は途絶えてしまう。数年前までは部外者の立ち入りを完全に禁止していた時とは打って変わって、PC達を歓待する島民。 
しかし、PC達の行く手に見え隠れする謎の追跡者。そして、「命が惜しかったら島から逃げろ」という、行方不明の先輩からの警告が。 

②「孤島団地」 
首都圏近郊のニュータウンで起こる事件。 
PC達はオカルト専門ネットTVの撮影クルー。 
かって自殺の名所として名を馳せた稀田団地。しかし最近また自殺が頻発しているというネットの噂を検証するために取材に向かう。 
都心に近いが自然に覆われ、交通の便も少ない稀田団地。そこの住人のほとんどは老人で、さながら過疎集落の体をなしていた。 

③「異形の檻」 
山間部に切り拓かれた閑静な住宅街、依塚町で起こる事件。 
都心に通じる住宅街として整備されたきた依塚町。しかしこの街には、戦前から伝わる古いしきたりも根強く生き残っていた。 
神と心を通わせる少女を祀り、街の吉凶を占う祭り。 
しかし、数年前の祭りで悲劇が起こり、神はこの街から姿を消した。永遠に。 
そして、数年ぶりに不定の狂気から解き放たれたPC①。断続した記憶に存在する、自分と同じ顔をした少女の行方を探し始める。 
父親である駐在の凶行を目にしたPC② 、街の少女たちを苛む悪夢の元凶を探すPC③ 、PC④とともに。 

④「侵略的外来種」 
首都圏近郊の自然に溢れた街、飯川市で起こる事件。 
飯川市で発見された珍しい蛇。それはアマゾン原産の輸入が禁止されているはずのものだった。 
侵略的外来種として飯川市の生態系を脅かす蛇。 
その調査を依頼されたPC達は、蛇の繁殖に隠れて進行する、恐るべき陰謀に直面してしまう。 

⑤「氷上に浮かぶ都」 
バルト海回遊クルージングを行う豪華客船で起こる事件。 
豪華客船ファンジア・ホライゾン号は、バルト海を航行中に、レーダーに映らない存在しないはずの氷山と激突する。 
奇跡的に無傷だったファンジア・ホライゾン号だが、衝突の混乱の中で侵入した何者かに乗員を殺害され、漂流を始める。

異能使い 第弐式シナリオ『この命、尽きるとも』今回予告&ハンドアウト

■■■ 今回予告 ■■■

受け継がれし血。
受け継がれし使命。
運命に殉じた女は母となったとき、初めて自らの血を呪った。
娘の幸せを願う強き決意に、魔性はつけ込む隙を見た。

 異能使い第二式
『この命、尽きるとも』
 目覚めよ異能の力。


▼▼▼ PC①用ハンドアウト ▼▼▼

サンプルキャラクター:繚嵐
運命:鳴風藍子 / 興味

あなたは父子家庭に育った。
幼い頃に両親は離婚し、父親に引き取られたあなたは、母親という存在をよく知らない。
父親はあなたに優しくて、その愛情を惜しみなく与えてはくれた。
しかし考古学者という職業柄、フィールドワークのため家を空ける事も多く、そういうときは寂しさが募り、母親という存在に想いを馳せることも多かった。

春休みを目前に控えたある日、あなたの元に一通の手紙が舞い込む。
それは母方の実家から送られてきたもので、遺産の相続に関する話し合いのするので一度帰郷して欲しいという内容の手紙と、実家までの切符が同封されていた。
あなたは、春休みに行くはずだったアンティークショップでのアルバイトと天秤にかけ悩むが、父の猛烈な後押しとバイトの休みがすんなりともらえた事から、思い切って帰郷することに決めた。

◆ライフパス
出自:生き別れ  <コネクション:事情通> 1Lv
目覚め:探求   予感<道標>
邂逅:鳴風藍子  運命<愛情>


◆特殊設定
あなたは子供の頃から夜目が非常に利く。
これは、異能力<超音波視覚>を生得しているためだ。
異能力<超音波視覚>を1Lvで習得すること。

あなたは、シナリオ中で覚醒するまで<超音波視覚>以外の異能力を使うことができない。


▼▼▼ PC②用ハンドアウト ▼▼▼

サンプルキャラクター:雪那
運命:碓氷白磨 / 悲哀

あなたは結界師の名門、碓氷家の血に連なる若き結界師である。
物心つく以前より始った辛く厳しい修行の成果で、今では一人前の結界師としての実力を手に入れた。
そんなあなたにとって、今夜は特別な夜だった。
あなたの師にして年の離れた実の兄、碓氷白磨が鳥居塚で行う結界維持の儀式を手伝うのだ。
しかし、鳥居塚を目指し山道を急ぐあなたに数匹の魔性が襲いかかり、その撃退に手間取ったあなたは儀式の時間に遅れてしまった。

急ぎ駆けつけたあなたが鳥居塚で見たのは、封印が破られ破壊された鳥居塚と、無数の結界師たちの屍であった。
あなたは自分の実力の無さを噛みしめ、師であり兄である白磨の死に涙した。
そして誓う。
封印を破って逃げ出した魔性・羅刹鳥とそれを手助けした術者を見つけ出し、自らの手で封印すると。

◆ライフパス
出自:御落胤   <コネクション:天武八家> +1Lv
目覚め:生誕   予感<興味>
邂逅:碓氷白磨  運命<共鳴>


◆特殊設定
あなたは封印術に天性の才を持っている。
異能力<魔封結界>を1Lvで習得すること。
※<魔封結界>はコスト5のため、戦闘時に使用する場合はそのDTの間<異能の申し子><氷柱舞><真撃紋>を使用することができない。


▼▼▼ PC③用ハンドアウト ▼▼▼
サンプルキャラクター:雷虎
運命:鳴風藍子 / 友情

あなたはかって、大陸から渡ってきた山の妖怪だ。
生まれて数百年を人を喰うために過ごしてきたが、その生活にも飽きてきた時に一人の人間の女と出会った。
その女は山間の風に揺らぐ白百合の様に美しく、気高く、あなたの心を捕らえ生き方を変えさせた。
人間のため自らを犠牲にして魔性を狩る彼女を手助けし、あなたは幾多の魔性を討ち滅ぼした。
血なまぐさい毎日ではあったが、あなたにとって生れて初めて得た幸福な日々だった。
しかし、その幸せな日々も終わりを告げた。
彼女が魔性を討つために使っていた霊具・風鳥弓が、その力の代償に彼女の命を蝕んでいた。
暫くして彼女は魔性狩りを引退し、夫得て子を設けた。
あなたは今も一人で魔性を狩り続けている。
彼女の愛した人間達を守るために、彼女に平穏な余生を送らせるために。

◆ライフパス
出自:魔性の一族  <コネクション:古仙堂> 1Lv
目覚め:飢餓    予感<競争>
邂逅:鳴風藍子   運命<愛情>

◆特殊設定
あなたは数百年を生きた古い妖怪だ。
その間、見聞きした知識はあなたの力になるだろう。
<コネクション:妖怪>を+1Lvする。


▼▼▼ PC④用ハンドアウト ▼▼▼

サンプルキャラクター:心裏
運命:鳴風深也 / 競争

あなたは特殊な探偵だ。
魔性や霊具にからんだ事件を専門に扱い、それらを幾度も解決してきた。
常に命の危険と隣り合わせだが、あなたにはそれをする理由がある。
“始原の息吹”ケルヌと名乗る魔人を探しだすことだ。
ケルヌは様々な魔性や術者を体内に取り込み、その力を自在に使うことができる。
あなたはヤツに同化された弟を奪い返すために、いつも戦いの場に身を置き続けている。

今回あなたが引き受ける事になった依頼は三仙会という退魔機関からのもので、羽矢把村(はやばむら)の鳴風家に代々伝わる霊具“風鳥弓”を守る事だ。
羽矢把村には羅刹鳥と呼ばれる魔性が封印されていたが、その封印が何物かによって破られた。
羅刹鳥は風鳥弓でしか倒すことができないので、封印を破った者は風鳥弓を破壊しようとするに違いない。
それを阻止し、もし可能ならば風鳥弓を三仙会に持ち帰って欲しいというものだ。
あなたはその依頼を引き受け、羽矢把村に向かう事になる。

◆ライフパス
出自:生き別れ        <コネクション:ワールドリンク> +1Lv
目覚め:犠牲         予感<愛情>
邂逅:“始原の息吹”ケルヌ  運命<崩壊>

◆特殊設定
あなたは他人の思考を読むのに長けている。
異能力<思考検索>を1Lvで習得すること。